多くの企業が、「研修の実施効果」を高めたいと思っています。

しかし、多くの受講者は実際の職場に戻ると日常業務に流され、研修で学んだことも時間と共に忘れ去られてしまうのが現状です。

人材育成を企画する人事部の方々にとって、「研修効果を高めること」は永遠のテーマと言えます。

今回のコラムでは、世界100カ国で28万1千人が働く巨大グローバル企業、世界最大の食品会社であるネスレをとりあげてみます。

ネスレで実施されている「リーダーシップ研修」の概要は次のようなものだそうです。

  • ネスレ社員130名へのインタビュー結果から、幹部社員にはリーダーシップ・アティテュードの不足が経営人事課題であると認識。この課題解決のために人材育成施策に取り組むことになる。
  • 今後、ネスレが変化の激しいビジネスに対応していくためには「自律性の高い組織でリーダーシップを発揮できる人材」が求められており、そのために「コーチング的マネジメントができる人材」を育成するための研修プログラムを開発。
  • 研修の対象者は、本社及び全世界のグループ会社の幹部社員で500名。
  • 研修の参加者は、事前に「360度FBサーベイ」を受けて、研修時に本人へフィードバック。
  • 研修は4日間にわたり、以下のプログラム内容で構成。
    • 1日目…イノベーションについて考える
    • 2日目…ネスレに求められているリーダーシップとは
    • 3日目…360度FBサーベイのフィードバック、自己分析
    • 4日目…アクションプランの作成
  • 研修終了後に参加者は、研修結果に基づいて専門コーチのフォローを受けながら、12ヶ月経った段階で再度2日半の集合研修に参加。ここでもう一度「360度FBサーベイ」を実施し、どれだけ自分のリーダーシップ・アティテュードが変革できたかを確認。
  • さらには、研修参加者はお互いの「360度FBサーベイ」結果を共有して、今後に向けてのアクションプランに対して相互アドバイス。
  • 実際に、この研修を受講したネスレの幹部社員には研修後の行動変容が認められ、大きな研修効果が出た。
  • よって、今後は、次期幹部候補であるマネージャーやグループリーダー(4500名)も受講する予定。

『人が育つ会社をつくる』高橋俊介著日本経済新聞出版社から引用。

この事例について、2つの点が素晴らしいと感じました。

1つは、研修プログラムの中で「リーダーシップ」を学ぶセッションと、「360度FBサーベイ」のフィードバック・アクションプランを考えさせるセッションを組み合わせたことです。

受講者は研修を通じて、「求められるリーダーシップ」が何であるのか、会社として期待されていることは何であるのかを学びます。

つまり、「目標とすべき人材要件」をしっかりと理解させておくのです。

その上で、「360度FBサーベイ」による自己分析を行わせることで、現在足りていないリーダーシップ行動が何であるのかをしっかりと認識できるのです。

そのことは、具体的なアクションプランを考えやすくなるという効果があります。

そして2つめは、研修の1年後にもう一度「360度FBサーベイ」を実施しているということです。

多くの受講者は、研修が終わって日常業務に戻ると、研修で学んだことはいつの間にか忘れてしまいます。

しかし、研修が終了して1年後にもう一度「360度FBサーベイ」で自分自身の行動変容度を確認することが決まっていれば、職場に戻ってからも日々の行動(アクションプラン)を意識するようになります。

また、1年後の結果と前回の結果を比較し、向上が目に見えて表示されることは、成長も感じさせ、やる気を高めるという効果も期待できます。

(※このためには、実施や報告において「ちょっとした仕掛け」が必要となります。)

ネスレはこれらの工夫によって受講者の行動変革を実現させています。

単に実施して結果をフィードバックするだけの運用ではありません。

さすが、世界的な優良企業と言われているネスレ。

単なる研修実施だけではなく、様々な工夫を講じることで大きな効果を出しています。

研修効果を高めたいと本気で考えている企業にとっては、参考になる好事例です。

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