◆長時間労働を改善するために忘れてはならないこと

長時間労働については、これまでもいろいろな形で話題になることがありましたが、最近、とても悲しいニュースとともに、非常にクローズアップされています。

これまで一般的に人事・労務に関するものとして考えられてきましたが、今では経営に関する重要な課題として扱われるようになっているといっても過言ではありません。

日本の1人あたりの年間総労働時間は他の先進国と比較すると多く、また、年間休暇取得日数は少ないというデータがあります。

日本では過去、長時間労働することや休みを取らないで労働することが、評価されるべきものである、更には美徳であるとういうような風潮が残念ながら存在したことも事実です。

しかし、ここ数年、労働者のメンタルヘルスの大切さや、労働時間短縮が実は業務効率アップにつながるというようなことも議論されるようになり、長時間労働改善の取り組みが少なからず行われるようになってきました。

例えば、ワーク・ライフ・バランスという言葉が一般的なものになり、ノー残業デーの設定や朝方勤務制度の導入に取り組む企業が少しずつ増えてきています。

更に、新たな動きとして、国、経団連が中心となって、消費活動を促すことを目的として、毎月末の金曜日は15時に退社するという「プレミアムフライデー」が実施されるようになりました。

国が主導しなければ労働環境が改善されないというのはいかにも日本らしい動きではありますが、手段はどうあれ長時間労働を改善する取り組みが進むこと自体は、とても良いことです。

ただ、ここで敢えて言及したいことがあります。

それは、「時間」ばかりに焦点をあてて議論されていないかということです。

 もちろん労働「時間」を短縮することはとても大切なことです。

しかし、「時間」を重視しすぎるあまり、例えば、上司(管理職)が部下に対して単純に労働時間の短縮のみを強要する、更には短縮した時間の中でこれまでと同様もしくはそれ以上の成果を求める、というようなことになってしまうと労働者の負担は減少するどころか、逆に大きなストレスを与えてしまうことになります。

部下の立場になって考えてみましょう。

上司(管理職)から早く帰宅すること、休暇を多く取得することを勧められたとします。

これ自体はもちろん歓迎すべきことです。

ただ、その一方で、「そうは言っても、やるべき仕事は山積していて、早く帰れないし休みなんて取れない」、「短時間で成果を上げろと言われても無茶だ」と心の中で呟いている部下もいるのではないでしょうか。

前述のとおり、労働時間を短縮することはとても良いことです。

しかし、「時間」だけを短縮するのではなく、部下がなぜ長時間労働を行わなければならない状況になっているのか、その原因を把握し、それを解消するために何をすれば良いのかを考え、実行することこそ上司(管理職)の役割ではないでしょうか。

もし部下の業務効率が悪いのであれば、取り組むべき業務の優先順位を明確にし、仕事の“質を高める”ための支援を行うということです。

一方で、もうひとつとても大切なことがあります。

それは、長時間労働を行っている部下の気持ちを理解できているかということです。

長時間労働を改善するために、「効率良く仕事を進めろ」「とにかく早く退社しろ」と一方的に言うだけの管理職はいないでしょうか。

こういったことを言われた部下は、どのような気持ちになるでしょうか。

「私の仕事の内容を理解した上で発言しているのか?」

「私のがんばりを認めた上で、効率化しろと指示してほしい」

「私が早く退社することで滞ってしまう仕事を、上司としてどう支援してくれるのか?」

部下が長時間労働から解放されたいのはもちろんですが、それだけではなく、部下は上司(管理職)に自分のことを気にかけてほしい、分かってほしいという思いがあることも忘れてはいけません。

やや乱暴な例えになってしまいますが、部下は上司(管理職)が自分のことを見ていてくれる、励ましたり労ったりしてもらえるというようなことがあれば、厳しい仕事に対しても前向きに取り組めるという傾向があります。

(もちろん、「これができていれば長時間労働をさせても良い」ということでは絶対にありません。)

上司(管理職)は、部下の仕事の状況はもちろんのこと、部下自身の思いや考えを把握する必要があります。

日頃から部下とのコミュニケーションを密にし、なんでも言い合える風通しの良い組織であることが理想です。

ただ、そういった組織をどうつくればいいのか分からない、頭では分かっているけど業務推進や管理に時間を取られ、組織づくりにまで手が回らないといった実態をよく耳にします。

これは、多くの企業様で課題となっていることではないでしょうか。

360度フィードバック(360度評価)の実施目的として最も多いのは、管理職のマネジメント力向上です。

マネジメントとは、単純に部下を管理するということではありません。

マネジメントとは、部下の仕事の状況を把握し、部下の意見や考えに耳を傾け理解し、指導・育成し、部下の能力を最大限に引き出すことで強い組織を作ることです。

強い組織を作るためには、現在のマネジメント状況を正しく自己理解させる必要があります。

360度フィードバックは、対象となる方(主に管理職)の行動が周り(他者)にどう見えているかを明らかにできるため、自己理解の手法として極めて有効です。

自分が良かれと思ってとった行動や無意識にとってしまっている行動が、他者(特に部下)に良くない影響を与えていることが結果として出てくるのです。

360度フィードバックは、上記のような「部下の気持ちを理解したマネジメント」の実践状況を自己理解されることができます。

また、自由記述設問への回答を通じて、部下が上司に期待していることなども吸い上げることができ、普段なかなか面と向かって行うことができないコミュニケーションを補完する役割を担うこともできます。

部下の気持ちを理解し、長時間労働の解消に向けた適切なマネジメントを支援するためのツールとして360度フィードバックを活用してはいかがでしょうか。

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