いろんな会社で「人」に関する仕組み、例えば人事制度や教育制度の見直し・改善の話が出ています。

それに伴って、現状の課題を発見するために、「人事制度に関する満足度調査」を実施される企業も多いようです。そこで必ず出てくるのが、評価に対する不満です。

「評価の基準が評価者によって違っており不公平だ!」といった曖昧な評価基準についての不満が、どこの会社でも必ず出ています。

そして、同様によく登場するのが、フィードバックについての不満です。

「評価結果をフィードバックしてもらえない…」

しかし、ここで“不思議な現象”が多くの会社で起きています。

評価者(上司)が、「フィードバックしている」と回答した数と被評価者(部下)が、「フィードバックしてもらっていない」という回答した数に大きなズレが生じているのです。

もちろん、上司の数と部下の絶対数は異なるのですが、その数を考慮したとしても、明らかに大きなギャップが発生しているのです。

このことはアンケート調査だけではありません。

上司とその上司が直接マネジメントしているその部下数名にインタビューした時のことです。

上司は「私はフィードバックしている」と回答し、その部下は「私はフィードバックされていない」と回答したのです。

同様のことを幾つかの会社で経験しました。

何だかおかしいですよね…。

『人事の7つの不思議』のひとつだと言えます(苦笑)。

なぜ、こんなことが起きるのでしょうか?

いろいろなことが考えられますが、一番の原因は「フィードバック」についての解釈(定義)の違いにあるようです。

上記の場合、「フィードバックすること」を、上司は「人事評価の最終結果を部下に伝えること」、部下は「人事評価の結果のみならず、評価の理由など様々な情報も教えてもらうこと」と解釈しているのです。

ここで考えてみましょう。

そもそも「フィードバック」って何でしょうか?

「フィードバック」の「フィード」とは「feed」であり、これは“food”を語源とする“食べ物”、“栄養”を意味するそうです。

「フィードバック」とは、本来、部下にとって成長のこやし(栄養)になるものを与えることなのです。

そう考えると、評価の最終結果だけを伝えることは、フィードバックとは言えないということです。

それはフィードバックではなく、単なる「通知」でしかありません。

最終結果を伝えるだけなら、人事部がメールなどで事務的に通知すれば十分事足りると思うのです。

別に上司がわざわざ行う必要はありません。


大事なことは、

「何故、上司にフィードバックさせているのか?」

「上司にしか出来ないフィードバックがあるのでは?」

ということなのです。

上司は、日常活動の中で、部下の仕事ぶりをよく観察しているはず(べき)です。

そして部下の特徴(強み、弱み、モチベーションリソースなど)も理解しています。

ですので、評価結果を伝えるだけでなく、業務上の課題について改めてじっくりと話し合ったり、動機づけたりしながら、今後の成長につながるアドバイスを与えることができるのです。

改めて考えると当たり前のことなのですが、これが本当のフィードバック(成長のための栄養を与える)ということなのです。

このことを「360度フィードバック(360度評価)」の話に展開してみます。

「360度評価」は、「360度フィードバック」と呼ばれることも多いです。

この呼び方は、個人的に大好きです。

ここで、この「360度フィードバック」というネーミングを考えてみましょう。

上記したことを踏まえると、「360度フィードバック」は、「360度の方向から、本人にとって成長の栄養となる情報を与えることができる仕組み」と定義することができます。

そう考えると、刺激があって有益に感じる人材開発手法って思いませんか?「360度フィードバック」って。

「フィードバック」をうまく機能させれば、組織の活性化、実践的な人材育成が図れます。

“日常的にフィードバックが行われている組織は強い”という実例も多く存在しています。

改めて、フィードバックの大事な意味について考えていただきたいのです。

「フィードバック」をうまく活かせていないなんて、もったいない企業が多いな…そう感じる私なのでした。

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