◆360度フィードバック(360度評価)のフリーコメントから考えるべきこと

管理職を対象とした360度フィードバックを実施し、結果を本人にお渡しすると、次のような声を聞くことがあります。

「結果を見ると『いつも気軽に相談にのってくれて感謝しています』というコメント、そしてそれとはまったく逆に『もっと相談にのってほしい』というコメントもある。

自分は部下の面倒見の良い上司だと自負している。それなのに、どうして後者のようなコメントが書かれるのでしょうか。

私は、自信をもって部下のマネジメントを行っているのに、『もっと部下の相談にのること』を改善点としなければならないのでしょうか?」

弊社は、360度フィードバックにおいて、選択式設問の他に自由記述式設問(フリーコメント)を設けることを強くお勧めしています。

選択式設問の回答結果によって、それぞれの行動が周囲の人にどう見えているかを数値として確認することはできるのですが、それだけではなぜその数値になったのか原因・理由まではよく分からないことがあります。

フリーコメントはそれを補完してくれるというメリットがあります(もちろん、フリーコメントのメリットはそれだけではありません)。

フリーコメントを読むと、「なるほど、自分の言動が周囲の人にそのように受け止められているから、こういう数値になるのだな」といったことに気づくことができます。

ただ、ここで冒頭にあるような悩ましい状況になることがあります。

なぜこのように全く逆のコメントが書かれるのでしょうか。

こういった場合、管理職本人はできていると思っていても、部下の思いや考えを理解できておらず、部下それぞれの期待に応えられていないことが想定されます。

例えば、新入社員のように知識や経験の少ない部下に対しては「日頃から気を配り、困っていると感じた時にすぐ話を聞いて相談にのる必要がある」と考えており、一方でベテラン社員に対しては「仕事を任せ、あえて口を挟まなくても困った時は部下自ら相談に来るはずだから、その際にしっかりと話をすれば良い」と考えている可能性があります。

管理職からするとどちらもちゃんと相談にのっていると認識しているのです。

しかし、部下自身の受け止め方が管理職の思いとは異なっていることがあります。

管理職自身は良かれと思ってやっていることが、実は部下にしてみるとそうではなく、残念ながらそのことに管理職が気づけていないということです。

部下の思いや考えを知るためにはどうすれば良いでしょうか。

最初にしなければならないのは、部下一人ひとりをよく観察することです。

「新入社員だから」「ベテラン社員だから」といった先入観を持つことなく、部下それぞれの状態を把握しておかなければなりません。

ただ、部下を知るためにはただ黙って観察するだけでは分からない部分も多くあります。

更に深く部下を理解するためには、あたりまえのことですが部下と直接話をしなければなりません。

こういうと、多くの方が「部下と個人面談などを頻繁に行って、もっと話をするように気をつけます」というようなことを言われます。

もちろん個人面談ができるのであればぜひ定期的に時間をとって部下一人ひとりと向き合って話をするべきです。

ただ、管理職の皆さんは日々業務に忙しく「部下としっかり話をしないといけない。面談をしないといけないな。」と思いつつも、なかなか時間が作れないという状況になることの方が多いのではないでしょうか。

そういった場合は、面談にこだわらず部下に気軽に声をかけるといったことだけでも実施してみてください。

簡単な挨拶でも、気軽な立ち話でもよく、話す内容もいきなり仕事のことではなく簡単な雑談でも充分です。

上司から気軽に声をかけられることで、部下は「ちょっと自分の意見を言ってみようか」「(仕事上の)悩んでいることを話してみようか」という気持ちになります。

このようにちょっとしたきっかけで自分の悩みや考えを気軽に伝えてくれるようになります。

そしてその話を聞いて、状況に応じた指導やアドバイスを行うことが大切です。

冒頭の事例に話を戻します。

この管理職は、確かに「もっと部下の相談にのる」必要があります。

しかし、部下全員が常に相談にのってほしいと考えているというわけではなく、相談したい内容、相談したいタイミングは部下によって異なるはずです。

大切なことは、「自分が望ましいと考えている部下への接し方が、実は部下の望んでいるものと異なっているかもしれないと考えることです。

そのためには部下をよく観察する、気軽に声をかけるなどして、その時の部下の気持ちを確認し、『相談に乗るべきタイミングはいつなのか』、『どのように相談に乗れば良いか』などを部下の気持ちになって判断する」ことです。こういう行動をすることによって、部下は「相談にのってくれている」と感じるようになるのです。

この事例のように、管理職自身が良かれと思って行動をしていても、部下が何を求めているのかが分かっていなければ管理職の行動はもったいないものになってしまいます。

部下が何を考え、どんな状態にいるのかを把握することがマネジメントの第一歩です。

日常の部下マネジメントでは気づくことが難しい、部下一人ひとりの意見や考え、部下によって思っていることが異なるということが、360度フィードバックのフリーコメントから浮き彫りになることがあります。

360度フィードバックは、上司・同僚・部下(特に部下)の意見や考えを把握するために非常に有効なツールです。

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