◆若手社員を生かすも殺すも・・・、「フィードバック」


『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか?』という本を読みました。

リクルートワークス研究所の豊田義博氏の著作です。

「前向きなのに頑張らない」「意識は高いが、目標は無難。まじめだけど、気が利かない。」そういった最近の若手社員の状況とその理由の考察、そこへの処方箋が書かれています。

本書の詳細については触れませんが、その中に「若手社員の就業意識と実態に関する調査(2016年 リクルートワークス研究所)」について記してあり、大変興味深かったので本調査を読み込んでみました。

http://www.works-i.com/pdf/171207_shugyouishiki2016.pdf

(大手企業勤務・大卒正社員の就業意識と実態を把握するための、22〜59歳の4大卒正社員1690名へのインターネット調査。)

その一部を抜粋します。

Q:あなた自身の仕事についてあてはまるものをお答えください

※ここでは社会人10年未満で集計しています

※設問には、以下の5段階選択肢で回答します。

〜全くそう思わない・あまりそう思わない・どちらともいえない・ややそう思う・そう思う〜

「ややそう思う」・「そう思う」と回答した人の全体に占める比率

1  多様な知識・技術が必要な仕事である 74.6% 
一連の業務を最初から最後まですべて任されている  60.0%
意義や価値の高い仕事である 59.9%
自分のやり方で仕事を進めることができる 59.9%
仕事の結果・成果の反響や手ごたえがある 53.2%

(値はワークス研究所掲載のデータをSDIコンサルティングにて属性を括って再集計したもの)

若手とはいえ「1.多様な知識・技術が必要」と感じていますが、「2.一連の仕事が任されている」「3.意義や価値の高い仕事である」「4.自分のやり方で仕事を進める」は職種・年次差などによるばらつきが出ていると推測できます。

一方で、「5.仕事の結果・成果の反響や手ごたえ」の比率が最も低いのは気になるところです。

もちろん、若手であるため、経営的に大きな仕事を任せられることは少ないかもしれませんが、仕事の結果・成果(そしてプロセス)の反響や手ごたえを感じることは、その後のビジネスパーソン人生を決めると言っても過言ではありません。

それには、若手本人の努力やがんばりが必要なことはいうまでもありませんが、それ以上に重要なのは上司が仕事の結果や成果の反響や手ごたえを伝え・感じさせること、すなわち「上司からのフィードバック」です。

また、実際に顧客企業で360度評価を実施いただくと、多くの企業で、このフィードバックに関する領域は他の課題系やコミュニケーション系の設問と比較して得点が低めに出ます。

(設問例)

期待を伝えながら部下に仕事を任せ、必要な場面ではきちんとフォローしている

・部下の良い取り組みや行動を積極的にほめ、成果をともに喜んでいる

・部下のミスや未熟さを発見した時は、その理由と一緒に叱ったり改善指示を出すなどの対応を行っている

・部下一人ひとりの特性にあわせて意欲を引き出すような働きかけを行っている

(注:実際は各企業の課題に合わせて設問設計しているので各企業により文言は異なる)

これらの設問の他者(部下が中心)の得点が低いのは、他者の立場から見ると管理職の動きが「伝わってこない」「もっと頑張っていただきたい」というメッセージ・要望であると捉えることができます。

一方で、管理職(ライン長)の皆さんのこの領域(フィードバック)に対する自己認識(自己評価)は実はそれほど低くないことが多いです。むしろ、「自分はまずまずやっている」と思われていることが多いように感じます。

360度評価の結果を返却する管理職研修などの場でも、この「フィードバック」の領域において、自己評価と他者観察の得点差(ギャップ)に意外な顔をする管理職の方々をたくさん見て来ました。

また、自己評価を控えめに回答した(こういう方は結構多いのです)ために自己と他者の得点差はあまり見られなかったものの、実は他者の得点の低さに釈然としない思いを抱き続けられる方も相当数いらっしゃいました。

休憩時間にこの方々にお話を聞いてみると、こんな声が・・・。

「私は実際に伝えていますよ。きちんと面談もしています。どうしてなんだろう・・・」

◆フィードバックが上手な管理職(上司)って何してるの?

多かれ少なかれ、どの管理職も「結果のフィードバック」はしているようですが、面談をしても部下が満足・納得しないケースも多いようです。

どうやらフィードバックの中身・質に違いがあるようですが、フィードバックが上手な(部下からの満足度が高く、部下が育つ)管理職はどんなやり方をしているのでしょうか・・・。

以前、さまざまな職種の管理職の方々から部下育成についてお話を聞いたところ、フィードバックが上手な管理職と下手な管理職に大きな違いを見つけることができました。

フィードバックが上手な管理職           フィードバックが下手な管理職
 結果だけでなく、そこに至る具体的なプロセスやその時の気持ちも伝える  ほめる・叱る内容 結果だけ伝える(例:グッジョブだったね/あれはダメだった/○%達成でよかったね/企画通って良かったね 等)
上司は問いかけ中心、部下が話をすることで、部下は自身の考えを反芻し気づくことも多い 話の主体者 上司が話す(7割以上は上司が話している)
やる気にさせることを大切にする叱るときは「力があるのにもったいない」と伝える 伝え方 部下の言葉を淡々と流してしまう(流すと「承認しない」ととらえられやすい)
頻繁に。面談を重要視している。営業同行、休憩などのすきま時間もうまく使う 頻度 目標面談・評価面談などの公式な面談のみ
褒めるときは人前で叱るときは個別に TPO 特に考えない
目的や進め方、部下の気持ちを強く意識し、準備している 事前準備 あまり目的を意識・準備していない

最下段にも記したように、フィードバックが上手な管理職は、目的を強く意識し部下の気持ちを考え準備を怠りません。一方で、フィードバックが不得手な管理職はそこに投資するパワーがそれほど大きなものではないのです。

逆に考えると、重要性を理解し、しっかりとした準備をし行動を変え、継続することで、レベルを格段にあげることができる可能性もあるということもできます。

弊社でも、360度評価の実施のサポートだけでなく、結果の読み取り、そしてその後の行動計画までを立案する「フィードバック研修」をご提供しております。

その中で大切にしているポイントとして、受講された管理職の皆さんが共通して弱点とされる部分を克服するための「具体的で実践的なやり方」を行動改善のヒントとして提供し、「私も明日からやってみよう!」と自ら感じさせる工夫などがあります。

重要なことは、結果を見て気づくことにとどまらず(これはこれでとても大切なことですが)、現場で行動を変えられるための思考をすることです。


世の中の多くの管理職(上司)がうまくフィードバックができるようになり、ひとりでも多くの若手(部下)が仕事の結果・成果(そしてプロセス)の反響や手ごたえを感じて活躍することを願っています。

弊社は、360度フィードバック(弊社ではこのように呼んでいます)専業会社として、これからも多くの企業をお手伝いできればと思います。

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