◆ランニングは科学、仕事の進め方やマネジメントも科学

ご存知のように空前のランニングブームです。

秋から初春にかけて全国のいたるところで、毎週のようにロードレースが開かれ、それこそ初心者からシリアスランナーまでそれぞれの楽しみ方で参加しています。

このコラムの読者の中にも、ランニングを趣味にされておられる方が一定数いらっしゃることと思います。

かく言う今回のコラム執筆者(大橋)も、学生時代は陸上同好会に所属していたこともあり、4年ほど前からランニングを再開し、現在はかつてないほどのめりこんでいます。

今回、ランニングをテーマに取り上げたのは、誰もが必ず取り組んだことがあるスポーツでありイメージしやすいことに加え、ランニングと仕事のレベルアップの仕方には共通項があるなと感じはじめたからです。

※以下は、すべて個人的な見解です。ランニング学会や経営学会の認定があるわけではありませんのでご了承ください。また、ランニングを取り上げていますが、実はすべてのスポーツや趣味・楽しみなどにも共通して言えることなのではないかと思っていますので、ぜひ最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

◆どんな人が速く走れるの?(どうすれば速く走れるの?)

世の中一般には、「長距離が速い人」は以下のような人だと理解されています。

  • 身体的素質(ex.長い足、強い心肺機能)の高い人
  • 苦しい練習を積める人(ex.練習量、根性)

前者は「人種」などが典型です。

ケニア・エチオピアといった身体的素質は見るだけで降参したくなってしまいます(本当は身体的素質だけではないのでしょうが)。

一方、後者は「月間走行距離●●●キロ」など、走りこんだ量が速くなるための指標と考えられていたりもします。

一般ランナーも「月間200キロ走ったら、フルマラソンで4時間を切れる可能性が高まる」などと目安にすることが多いです。

オリンピック金メダリストの高橋尚子さんや野口みずきさんは「走った距離は裏切らない」という名言まで残していました。

私の学生時代は、とにかく練習をこなすスタイルでした。

練習を体力の限界までやりきり、それでも望む成果が出なければ、「素質が足りないのかな」と深く考えもしませんでした。

就職後25年して少し時間に余裕ができたので走りを再開させましたが、身体が全く動きません。太って身体も重くなっていますし・・・。

これはただやみくもに走るだけではダメだなと思い、ランニングに関する書物を読んだり、ランニングクラブの練習会に参加してコーチに指導を受け試行錯誤したりする中で、ランニングとは体力はもちろん大切ですが、それ以上に科学的に考え、仮説検証を繰り返しながらレベルアップしていくスポーツなのであるという自分なりの結論に至ったのです。

例えば以下のようなことです。

タイムだけを追い求める練習を行うのではなく、トレーニングの目的を明確にし、それを意識しながら行う「フォームはとても重要」であることを理解し、足・膝・腰への負担を減らす、できるだけ地面の抵抗を少なく着地するフォームを常に意識するようにする「理論」と「自分の状況・体型・クセ」などを考慮しながら、自分のフォームを創りあげたり、必要な筋肉をつけたりする(体幹トレーニングなど)目指したフォームになっているかを撮影・確認し、必要に応じてフォームを修正する

◆ランニングのレベルアップの過程は仕事の進め方に似ている

ランニングを再開して強く感じたことは、ランニングで速くなろうとするプロセスは、世の中のハイパフォーマーたちの仕事の進め方によく似ているということでした。

コンサルタントとして、各企業のハイパフォーマーに「仕事の進め方」などの行動特徴についてインタビューさせていただくことが多いのですが、以下のような共通点(一部を抽出)が見出せました。

必ず「目的(何のために)」を問い、手段のみを考えることに陥らないようにしている。仕事の進め方やマネジメントの仕方について、「軸」となる考え方や原則を持っている。困った時、判断に迷う時はこの「軸」に照らして考えている。とはいえ、自分の状況にあわせて、必要なスキルや知識を習得し、「自分の型(フォーム)」を創っている自分が意図した通りに行動できているかを積極的に確認し、仮に厳しい指摘であっても冷静に聞き、前向きに受けとめて行動改善につなげている。

◆特に重要な「他者・客観的な情報」

この1〜4はランニングにおいても、仕事を進めていくにおいても、どれも重要だと思うのですが、特に興味深かったのは4でした。

ランナーとして、自分の目指すフォームになっているかを確認する際には、「専門のコーチに見てもらう」「映像に撮って見る」という方法をとっていましたが、自分の「このように動いているつもり」と周囲への「こう見えている」に大きな乖離があることが珍しくなかったのです。

もっと言うと、「自分はこうしているつもりなのに、実際の映像を見ると全く違う動きをしている自分がいる」ことを発見した際はある意味衝撃であり、自身の思い込みをそのままにしないで、客観的な事実を知らないと大変な間違いを起こしてしまうなと怖くなりました。

と同時に、映像のような武器をうまく使いこなせば、理想のフォームを早く手に入れられるかもしれないぞと嬉しく思ったことを思い出します。

では、これをビジネスのプロセスに置き換えてみます。

自分の行動が周囲にどのように見えているのかを確認するためには、どうすればよいでしょうか?

上司からの指摘もあるでしょうが、それだけだと客観性に欠け、納得できないこともあるでしょう。

納得感を高めるためには、自分の行動をさまざまな観点から声をもらう、すなわちフィードバックしてもらうことが重要となってきます。

そして改めて思い起こしたのが「360度フィードバック」の効能です。

仕事場面、マネジメント場面でも同じような「嬉しさ」が得られるのではないでしょうか。

ポジティブな賞賛や期待をもらう という「嬉しさ」

事実を知ることができる という「嬉しさ」

今、この時点で気がつけて良かった という「嬉しさ」

など、いろいろな形の嬉しさを得ることができるツールであるということができます。

他者からの声を聞くことは時には怖さを伴うことではありますが、嬉しいことでもあります。

ぜひ積極的に取り入れてみてはどうでしょうか。

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