◆「若い頃に上司から怒られて成長した」?
弊社の360度フィードバックを導入されている企業様で研修を実施した際、受講されている管理職の方から次のような意見を聞くことが少なからずあります。
「自分は何度も怒られて成長した。だから部下にも同じようにした方が良いと思っている」
「部下を育てるためには、ダメなところを何度も指摘して改善させないといけない」
これらは決して部下を嫌っているわけではなく、部下のことを大切に思う気持ちから出てくるものであると思います。
ハーバード・ビジネス・レビューの2018年7月号に、「NEGATIVE FEEDBACK RARELY LEADS TO IMPROVEMENT」という興味深い記事が掲載されていました。
透明性の高いピアレビュー・プロセス(例えば制作された成果物に対して、同僚やチームメンバーから評価されるような制度)を導入している会社の現場データを分析すると、「批判的な評価を受けた社員は、もっと良い評価をしてくれそうな人の近くで仕事をするように行動を起こす」という結果が出たというものでした。
ネガティブな評価を受け取ると、人はその評価をした人から離れ新しい人間関係を作ろうとするそうです。
話を冒頭部分に戻します。
若手社員が何度も怒られる(ネガティブな評価をされる)とどう感じるでしょうか。
「なんでそんなに怒鳴られないといけないのだろうか」
「欠点ばかり指摘して何の意味があるのだろうか」
「私のことなど全く大事に考えていないのだろう」
実はこんな気持ちになっている人が少なからずいます。
ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、「批判的な評価を受けると人は離れていこうとしてしまう」と書いています。
すべてがそうだとは言いきれませんが、少なくとも部下の行動や考えを否定ばかりしていると、部下の気持ちは離れていくでしょう。
なぜなら、部下は上司に対する信頼感が低下し、上司は「この部下は何で自分の思いを理解してくれないんだ」と考えるようになり、上司と部下の思いや考えがすれ違ってくるからです。
360度フィードバックの研修で、受講されている管理職の方に感想をお聞きすると、多くの方はこのこと(部下とのすれ違い)に悩んでおられます。
では、部下を褒めたり持ち上げたりすれば良いのでしょうか。
もちろん、褒めるだけではこの問題を解決することはできません。
大事なことは、管理職の指導や言動を部下がどう受け止めているかということです。
部下の状況を確認する最も効果的なツールが360度フィードバックです。
360度フィードバックを導入されている企業様の結果を分析すると、上司のマネジメントに対して部下の意見や思いは本当に多くあることが分かります。
部下一人ひとりの性格や考え方、上司の指導の受け止め方は異なるのです。
もちろん360度フィードバックは匿名性を担保していますので、具体的に誰が何を言っているということまでは分かりませんが、360度フィードバックの結果を見ることで自分のマネジメントがどのように受け止められているのか、また部下によっても感じ方が違っているということがある程度見えてきます。
管理職の方には、360度フィードバックの結果を見て、今の自分の部下への接し方を見直したり工夫したりすることをお勧めします。
自らの経験や思い込みで誤った指摘やただ怒っているだけと受け止められるようなマネジメントをしていないか、振り返って欲しいのです。
部下一人ひとりを考慮した指導の大切さに気づいていただけると思います。