「Harvard Business Review」2016年7月号で、『組織の本音』という特集が組まれていました。

その中の論文「Can Your Employees Really Speak Freely?」(※)に、管理職のマネジメント力強化につながるのではないかと思われる2つのことが書かれています。

まず、部下に率直に発言をさせるためにすべきことは何かというものです。

例えば、ミーティングを定例で開催し、部下とのコミュニケーションをとる機会を設けること。

もし議題がなかったとしても、シンプルにその時部下が持っている意見を聞くだけでも良いので、継続的に開催することが重要である。

また、たとえどんな意見であったとしても、口火を切った部下に感謝しその意見を尊重することが大切であると書かれています。

上司がコミュニケーションを怠ると、話をしても無駄だという部下の諦めの気持ちが30%増加したというデータもあるようです。

そして、もうひとつも興味深いことが書かれています。

ある著名な医師が、長年優れた実績を残し同僚からも高く評価されていたものの、なぜか患者の満足度調査ではいつもスコアが低い。

そこで病院の役員が、この医師に対して1つだけ行動を変えてみるように促したところ、翌月、患者満足度のスコアは急上昇したそうです。

実は、この医師は回診の際、ベッドのそばに立って患者を見下ろして話していました。

これを、椅子に座り患者と面と向かって話すようにしただけだったのです。

この論文に書かれていることは、決して難しいことではありません。

上記2つのうち1つめにあるように、話しやすい雰囲気を作る、話を聞こうとする姿勢を見せる、これだけで部下は上司に対して大きな安心感や信頼感を持つようになります。

また、2つめは、医師と患者の関係を、上司と部下の関係に置き換えて考えてみるとよいでしょう。

同じ目線で話をする、言い換えれば、話す内容は同じでも接し方を変えるだけで、部下の上司に対する印象を良い方に大きく変えることができるのです。

こうしたことを通じて、部下は上司に対して自分の考えや思いを率直に述べるようになり、現場で起こっていることや部下自身の斬新な考えが耳に入ってくるようになります。

更に、こういったことが積み重なっていくと、組織が活性化され、更には組織強化にも繋がっていきます。

ただ、各企業がこういったことを実現しようとしても、なかなかうまくいかないというのが実情ではないでしょうか。

多くの企業がいわゆるマネジメント研修などを通じて、管理職のマネジメント力を強化することに時間やコストを費やしていますが、実際の職場での管理職の行動にうまくつながっていかないという話を人事担当の方から聞くことが少なからずあります。

研修はどうしてもマネジメントに関する知識やスキルを伝えるだけの場になってしまうという傾向があるため、現場での些細な行動、特に部下の視点に立った行動につながりにくいと考えます。

ここでいう部下の視点に立った行動や基本的な行動というのは、上記のような、話しやすい雰囲気を作る、話を聞こうとする姿勢を見せる、同じ目線で話しをするといったことです。

しかし、多くの管理職の方が、自分がそのような行動をとれていないことに気がついていません。

また、基本的で些細な行動であるため意識していない方も多いのではないでしょうか。

こういった状況は、非常にもったいないことです。

「360度フィードバック(360度評価)」は、管理職の行動状態(部下・周囲に自分の行動がどう伝わっているか)を本人に気づかせ、行動変容を支援するためのツールです。

マネジメント研修などで知識やスキルを付与することも大事ではありますが、部下にとって影響の大きな行動(それも些細な行動)に気づかせ、実践を支援する「360度フィードバック」も活用することで、部下からの信頼感が高いマネジメント力の強化は実現するでしょう。

(※)コーネル大学ジェームス R.ディダート教授、テキサス大学オースティン校イーサン R.バリス准教授共著

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