ここ2〜3年、ヤフー株式会社の「1on1ミーティング」という施策が人事の世界で話題になっています。

上司が部下一人ひとりと週に1回あたり30分の対話の時間を持つというものですが、この対話によって、

「上司・部下間の関係性が深まる」のはもちろんのこと、

「部下の実情や悩みを知り、目標達成のためのアドバイスをより具体的で効果性の高いものになる」

「上司の方針が部下にきちんと伝わって実行されているかなどの自身のマネジメントを振り返る機会になる」

そして「組織の活力がアップする」など、大きな成果を上げているようです。

(参考文献:爆速経営 日経BP社 蛯谷 敏 著)

環境変化により業務難易度が高まる上にさらなる生産性の向上も求められ、管理職のプレイング的要素が増す中、上司・部下間のコミュニケーション量や濃度は減っている…、というのが世の実態かと思います。

しかし、なんとヤフーでは、部下とこの「1on1ミーティング」を行うことを必須としています。

上司(または周囲のメンバー)が自らの業務がいかに忙しくてもです。

そして、この取り組みへの本気度を示すために、社長自らが直属の部下(つまり役員ですね)と「1on1 ミーティング」を率先垂範で実施しているそうです。

忙しいからこそ、逆に上司・部下間のコミュニケーション密度を高めることが、部下の意欲を高め、組織を元気にし、ひいては業績向上につながるということなのでしょう。

さて、ヤフーほどの取り組みでなくても、忙しい中で、上司が部下のことを知り、それをきっかけに部下とのコミュニケーションを濃くする、そんなことはできないでしょうか。

おススメしたいのが、「部下の360度フィードバック(360度評価)のデータをじっくり見る」ということです。

360度フィードバックは対象者本人にとって「気づき〜行動変容」という大きな効果を生むことはいろいろなところでお伝えしてきた通りですが、実は上司にとっても「部下のありのままの行動の状況」を垣間見ることができる有益な材料なのです。

(部下が360度フィードバックの対象者であることが前提です。360度フィードバックは、管理職が対象者となることが多いですが、最近では「リーダー層」への実施や、社員全員への導入をされる企業も増えており、このように自分の知らない部下の実態を知るためのツールとしても活用可能です。)

よくあるケースは、「部下得点(部下たちが観察した結果)」と「上司得点(上司の観察の結果)」に大きなギャップが出るというものです。

具体的には…、

例1

<上司から見た部下(対象者)の行動>

・後輩への指導が熱心。Aさんに熱弁をふるって指導している場面をよく見る。

<360度フィードバックの情報>

・Aさんへの指導は熱心だが、他の多くの後輩には見向きもしない。

・熱血指導してもらってありがたいが、私の考えはあまり聞いてもらえない。

 考えを押しつけられているように感じる時がある。

例2

<上司から見た部下(対象者)の行動>

・自分の意見を出さないため物足りない感じがする。何を考えているのかわからない。

<360度フィードバックの情報>

・寡黙だが、プロジェクトなどで議論が行き詰った時は、状況を整理して議論を進めやすくしてくれることが多い。

いかがでしょうか。

360度フィードバックのデータは、「上司が知らない部下の行動の状況」を教えてくれる、上司にとっても「気づき」の材料なのです。

もちろん上司には、「結果を鵜呑みにしすぎず、自分の目で部下の『実際』を知りに行く」といった姿勢が求められます。

また、「結果を上司には開示する(現場での行動改善・成長のために上司が支援する)」という事前の約束も必要でしょう。

しかし、このように360度フィードバックのデータやコメントをきっかけに、部下の「頑張り度合い」や「もっと成長していくための課題」を見つけ、目標面談や人事考課面談の材料とする、日常の業務の時に注意して見て必要に応じて声をかける等部下の成長を支援する上司になれれば、部下の満足度(ES)も高まっていくに違いありません。

今後は、このような組織の活性化を実現するために、360度フィードバックを会社全体で取り入れられる企業が増える、そんな予感がします。

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