◆ 360度評価とは[2]

1)日本における360度評価の歴史

日本企業においては、1970年頃に活用が始まったと言われています。

その頃、いち早く導入された企業として、神戸製鋼や石川島播磨重工業があげられます。
前者(神戸製鋼)では人事評価の一環として導入され、後者(石川島播磨重工業)ではリーダーシップ研修の手法として導入されました。
両社とも画期的な取り組みであると注目を浴びたようです。

1990年代半ばから、人材育成での活用により焦点があたり、先駆的取り組みに積極的であったソニーなどにおいて導入が進みました。

そして2000年頃から幅広い業界で大手企業を中心に導入が進み始めました。特に自動車や電機などの大手メーカーや総合商社、銀行などへの導入も話題となりました。

その後は、2008年のリーマンショックによって疲弊していた組織の強化手法としての注目も集まりました。
2010年頃に日経ビジネス、AERA、プレジデントなどビジネス系の雑誌に続けざまに取り上げられるほど導入が進んでいきました。


 2)最近の導入率

一言で「導入」といっても、全ての管理職を対象に導入されているケースもあれば、階層別研修の一部プログラムとして一部の管理職のみに導入されているケースもあります。

上記を踏まえると、業界や会社規模を問わず全ての企業における導入率は、2〜3割程度と言われています。
(※ただし、従業員が100名未満の会社への導入率はもっと低いでしょう)

大手企業においては3〜4割程度と導入が進んでいます。
その中でも、「人材強化」を重視されている企業においては約46%という調査データ(※)もあります。

※日本経済新聞社が毎年秋に発表していた【「人を活かす会社」ランキング調査】。
 そのランキング指標の一つとして「360度評価の実施有無」が組み込まれており、その調査における360度評価の導入率は、ここ10年間で大きく上昇しています。(2006年33.3% ⇒ 2016年46.1%)


 3)導入率が高まっている理由

①「管理職の強化」がより重要なテーマに

近年、多様な価値観を持った若手社員、さまざまな背景をもった中途採用者の増加、働き方改革の推進に伴う業務効率化・仕事の質の向上などマネジメントの難易度は高まっています。

一方で、組織成果向上への大きな影響要因の1つとして「管理職のマネジメント」が挙げられることは周知の事実です。
それだけに、管理職に対する期待が高くなり、多くの企業において「管理職の強化」が急務となっています。

 

② より効果の高い施策への見直し

上記①のとおり「管理職の強化」が重要視されながらも、知識・スキルの習得を目的とした従来型の講義形式の研修では、実践場面での行動変容につながりにくいという声も聞かれています。

360度評価を活用した育成施策の特徴は、「対象者個々人のマネジメント実態に焦点を当てること」であり、それによって当事者意識を高めることができます。
対象者自身の実際の現場行動を具体的に振り返る「現場志向的な実践研修」であると言え、従来型の講義やケーススタディー中心の研修とは一線を画しています。

 

③ 導入成功事例の増加

「360度評価≒人事評価制度の一つ」といった固定観念をお持ちであった人事部の方も、人材育成手法としての有効性を理解されたことで、“まずは人材育成を目的に導入してみよう”と、導入に対する心理的障壁が低くなり導入が進みました。

そして、導入して実際に効果を上げている企業の事例も増えたことから導入に対する安心感が高まり、前向きな検討が進み始めたこともあると言えるでしょう。


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