◆360度フィードバックの効果を高める実施後施策〜職場報告会〜

前回のコラムの最後で「職場報告会」について書きました。

前回のコラムはこちら

「◆「場の設定」をどのように工夫するのか? 〜360度フィードバックの実施効果を高める結果返却」

その後、いくつかお問い合わせもいただき、みなさまの関心の深さを感じていました。

そんな中、ある実施企業さまから「フィードバック研修後に職場報告会を実施して『良い機会になった』という人がいます」という話を聞きましたので、お願いしてその方(Aさん)にインタビューさせていただきました。

今回はその内容をご紹介します。

【Aさんのお話】

〜フィードバック研修で結果を配付されて、見た時は正直落ち込みました。

得点もフリーコメントも予想よりひどかったです。

すぐに片づけてしまいたかったですが、研修なので仕方なく、指示に従って10分以上結果を眺めたり、特に他者回答値が低い部分をマークしたり・・・。

講師からも「まずは今日だけでも、人のせいにしないで、自分に原因があると思って考えてみてください」と言われたので、そうやって考えてみました。

そうすると、メンバーの顔が浮かんできて、

「なんでこんなふうに思わせてるのかなあ? みんな思ってるのかなあ? 自分のどんな行動が影響しているのかなあ?」

とか、いろいろ想像するけど、もちろんはっきりしたことはわからない。

「そういう場合は、職場報告会で、結果を見て考えた自分の課題やその原因を素直に伝えてみると良いですよ」

と講師に教えてもらったので、思い切って自分の考えを話して、みんなの考えも聞いてみることにしました。

職場に戻って報告会をやってみました。

忙しい中、回答してくれたこと・コメントをくれたことへの感謝、

自分が結果をどう受けとめたか、

理解できたことは何で、受けとめきれていないことは何か、

自分の行動の特徴やそのような行動の特徴が出る背景やベースにある考え方は何か

などを、部下からの聞くためにも、まずは自分の考えを丁寧に一生懸命伝えました。

そうしたら、意外だったんですが、いつもはあまり言わないメンバーから、ぼそぼそと声が少しずつ出ました。

「新しい業務・チームとはコミュニケーションが多いが、自分たちには目が全然向けてもらえない」

「他部署と何を話しているのかもっと伝えてほしい」

などの要望が遠慮がちながらも聞けたんです。

私としては、忙しいメンバーに負担をできるだけかけないように・・・・というつもりだったのが、メンバーからするとコミュニケーションや情報が少なくて不安だったんですね。

途中で、

「今日はみんないろいろ話してくれるけど(いつもはあんまり言わない気がするけど)なんでなの」と聞いてみると、

「それは、Aさんが自分の気持ちを正直に話してくれたからですよ」

「私たちだって、話した方がいいと思っているけど、今まではなんか近寄りがたかったんですよね。でも、今日、一生懸命、みんなの声を受けとめようとしているAさんを見て、『話しても大丈夫かな』という気持ちになったんです」

と言われて、はっとするやら、今までの自分のコミュニケーションの仕方を申し訳ないと思うやら。

私も改めて、

「一時的に、新しいチームに手がかかっているが、決して目を向けていないわけではなく、むしろ自立走行できるチームとしての期待値が高いこと」

「思うことがあれば、ちゃんと聞くので遠慮せずに伝えてほしいこと。自分はメンバーと話し合ってよい組織を・良い仕事を創っていきたいこと』

を伝えました。

一連の流れを通して、距離感が縮まりました。すごく良かったです。

正直はじめての経験でした。〜

Aさんがメンバーの声を受けとめ(わからないことはわからないと伝え)る姿勢を示したことが、コミュニケーションの変化の出発点だったと思えます。

360度フィードバックに回答した部下や周囲は、

「あの人はどのように感じているだろうか」

「きちんと受けとめてくれるだろうか」

「ちゃんと伝わるといいけどなあ」

など期待や心配をしながら、フィードバック後の上司の一挙手一投足に注目しています。

もちろん、最終的には発言や行動で部下や周囲の期待に応えていくべきです。

ですが、まずはこのような職場報告会を出発点として、期待をすりあわせ不安を払拭するといったコミュニケーションを行うと、両者の関係性は良くなっていく可能性が高いです。

また、このAさんの職場報告会は、実は部下のみなさんも、「Aさんについて考えることを通じて、組織について考える」ということにつながっています。

つまり、組織の一員としての『当事者意識』を持つことにもつながるということです。

このように、「職場報告会」は単に研修の報告を行い、対象者の行動変容を促すだけのものではありません。

この「場」を通じて、職場のコミュニケーションが活性化につながる事例も少なくないのです。

Aさんのお話を通して、「360度フィードバックによる職場報告会」は、組織開発の有効な手法であることをあらためて認識した次第です。

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