◆ 360度評価の活用事例[1]
1)活用パターン(活用の4分類) |
360度評価の活用目的は、「人材育成」「現状把握」「組織づくり」「人事評価」の4つに大別されます。 ほとんどの企業が「人材育成」は大前提とし、「人材育成」に別の目的を組み合わせて活用されています。 例えば、「管理職の底上げ【人材育成】を図る一方で、優れた人材の抜擢の参考資料【人事評価】としたい」といった活用です。 以下、それぞれの活用目的について解説します。 |
2)人材育成 |
人材育成の最初のステップとして重要なことは、「現在の状態(強み・弱み)を正しく認識させること」です。ここが曖昧であると適切な人材育成は実現できません。 360度評価は、職場で取っている行動が周囲にどのように伝わっているのかを気づかせます。 多くの企業では、管理職に登用した際に「新任管理職研修」を受講させるものの、その後は特に育成施策を講じられていません。 もちろん、管理職を対象とするだけでなく、中堅社員などに対して実施され効果を上げている企業も少なくありません。 ⇒【お問い合わせフォーム】からご連絡(ご質問)いただければ、具体的な活用事例や |
3)現状把握 |
管理職のマネジメントを通じて現場の課題などを定量的に把握することを目的とした活用です。 従業員意識調査(ES調査など)も同様の目的で実施されますが、従業員意識調査の集計単位は「部門」「職種」単位であり、全社における組織の特徴を大まかに把握するものです。 ところが、360度評価の集計単位は個々の管理職であり、個々の管理職がどのようなマネジメントを行っているのか、組織内の人間関係はどのように状況であるのかを把握することができます。 人事部に集まる個々の管理職情報は、上司の”主観”に基づいた人事評価結果や組織業績などの定量的なデータであり、必ずしも現場の実態をあらわしているとは言えません。 実際には、近年現場で生じているパワーハラスメント、メンタルヘルス不調、若手の離職、コンプライアンスの不徹底状況などに対して、詳細状況や原因などを明らかにする活用が増えています。 ※【現状把握】に関しては、「①『見える化』による気づき」もご参照ください |
4)組織づくり(組織活性化) |
「風通しが良い組織」「チャレンジ精神あふれる組織」をつくるために、管理職が取るべき行動を定義し、それを理解、実践させていくことによって良い組織や強い組織をつくることを支援します。 最近では、「働き方改革」の一環として生産性の高い組織をつくることを支援する手法としての活用にも注目が集まっています。 360度評価の実施プロセスは、回答する多くの従業員も巻き込むために組織全体の意識改革のプログラムとしての効果も高いと言えます。 また、会社として大事にしたい価値観(バリューや経営理念)の浸透を支援する活用事例も多くあります。 |
5)人事評価 |
一言で「人事評価」といっても、さまざまな場面での活用があります。 「人事評価」と聞くと、評価結果を月例給与や賞与など賃金に反映させることをイメージしがちですが、昇進昇格の参考資料としての活用、適切な異動配置へ活用するなどいくつかの施策が考えられます。 ここで押さえておくべき大切なことは、360度評価の結果をダイレクトに賃金に反映している企業は極めて少なく、あくまで参考情報として活用しているということです。 いずれにせよ、はじめて360度評価を人事評価として活用される際には慎重になるべきです。 業員に不安や心理的抵抗を抱く者も多いでしょうし、誤った使い方をすることで、組織内に疑心暗鬼の雰囲気をつくってしまい、組織としてのマイナス効果につながるケースも少なくありません。 |
6)最近のトレンド |
360度評価が日本企業に導入されて以来50年近くが経っていますが、導入目的の推移を考察すると、いくつかの変化が生じていることがわかります。 当初は「人事評価の手法」として注目されたことが多かったためか、なかなか導入・浸透が進みませんでした。しかし、「管理職本人に気づきを与える育成の手法」として捉えられたことで徐々に導入・浸透が進んできました。 最近の傾向としては、単に「気づきを与える育成手法」としてだけでなく、具体的な行動改善につなげるための工夫が重要視されてきています。 日本における導入率が高まり、同時に毎年継続実施をされる企業も増えてきましたが、単なる気づきの手法としてだけではマンネリ化してしまい、実施することが目的となってしまいます。 それだけに、実施効果を高めるためのさまざまな工夫(特に実際に行動変容を生み出す工夫)が重視されています。 また最近は、特定の人事テーマに対して課題解決を支援する手法としての活用が徐々に増えています。 例えば、 など、具体的なテーマに対応した活用です。 企業をとりまく人材マネジメント環境の多様な変化とともに、360度評価の活用も進化しているといえるでしょう。 |