身にこたえる厳しい経済環境ですね。

この厳しい状況は、まだまだ数年間は続くのではという見方が多いようです。

いずれにせよ、この不況に負けないように従業員、会社ともに変革していかなければなりません。

ダーウィンの「変化に最も対応できるものが生き残れる」という言葉が、今のビジネス界にも当てはまるような、そんな気さえしてしまいます。

経営者は、従業員に対して言っています。

「今こそ、変わろう!変わらなければならない。

今の仕事のやり方を見直し、自らの行動を変革してこの不況を乗り切ろう!」

表現は違うものの、上記のようなニュアンスで社員を叱咤激励している経営者は少なくはないようです。

しかし、冷静になって、ふと考えてしまいます。

「それで本当に現場の従業員に伝わると思っているのだろうか?」

「気合は大事だけど、結局、何が言いたいのかな?」

「一般論ではなく、もう少し具体的なメッセージが必要なのでは?

「本気で現場の従業員に変わって欲しいと思っているのだろうか?」

“どんな行動”を“どんな風”に変えることを期待されているのでしょうか?

現場では現場なりの苦労によって、これまで自分達なりに行動を変えてきた人達もいるのではないでしょうか?

その方々に「行動を変革しろ!」と言われても、何をどう変えればよいのか、悩まれてしまうのではないでしょうか?

経営者の曖昧で漠然としたメッセージは、現場従業員にとっては単なるスローガンとしてしか伝わっていないことが多いものです。

似た例では、「我社は、顧客満足が第一」といった経営者のメッセージを思い浮かべてしまいます。

また、「みんなで世界平和を!」も同じようなレベルであり、そのことに対して反対する人は誰もいませんが、そのメッセージを受けて具体的に行動を起こす人は必ずしも多いとは言えません。

今、会社に求められる変革とは、具体的にはどんな行動を取ることなのか?

これまでの行動と違って、何をどう変えるべきなのか?

経営者のメッセージを現場に伝えるために、「360度フィードバック(360度評価)」も上手く組み合わせて活用するのにな…と、いつも思ってしまうの私なのです。

高い顧客満足の実現を考える上で、忘れてはならない幾つかの大事なキーワードがあります。

その中でも最も重要な1つである『真実の瞬間』

皆さん、このキーワードを聞かれたことがありますか?

1980年代にスカンジナビア航空が経営再建に取り組んだ際のサービスマネジメントの考え方であり、同社を復活に導いた要因のひとつであると言えるものです。

これはリチャード・ノーマンという経営コンサルタントが唱えた考え方ですが、当時の社長兼CEOだったヤン・カールソンが出版した、「真実の瞬間(邦題)」という書籍の中で紹介され、注目が集まりました。

簡単に言えば、

「お客様は、その企業に接する瞬間(ほんの短い時間)で、その企業のサービス全体に対する良し悪しを評価してしまう」

そんな考え方です。

例えば、いくら立派なレストランで美味しい食事が出てきても、ウエイターのちょっとした嫌な対応が、そのレストランの最終満足度を決定してしまうということなのです。

「嫌な対応」とは、ちょっとしたことです。

“無愛想で偉そうな言い方をされた”、とか“ムッとした表情をされた”とか、ほんの一瞬の出来事です。

皆さんも、レストランに行った際に、ウエイターから“カチン”とくるような不愉快な対応をされたら、いくら料理が美味しくても、お店のインテリアが素敵だったとしても、そのレストランにはもう行きたくないと思ったという経験があるのではないでしょうか?

『真実の瞬間』は、日常生活で受けるサービスにおいて、数多く存在しています。

そして、がっかりさせられることが多いのも事実です。

上記のとおり、店員の笑顔なき無機質な表情、ぶっきらぼうな言葉使いなどは、その最たるものです。

お客様は、些細なことであっても、サービス提供者が思っている以上に敏感に感じてしまうものなのです。

この一瞬、一瞬の出来事が、大事なお客様を逃がしてしまっています。

そして、業績を低下させているのです。

自社における真実の瞬間は、どんな場面で生じているのか?

それをしっかりと見極めて適切なマネジメントを行うことで、CSそして業績は確実に高まっていくでしょう。

ちなみに、この『真実の瞬間』。

これは、お客様へのサービス提供といった場面以外にも適用できる大事な考え方です。

これについては、また別の機会でコメントしたいと思います。

「お客様のために、一生懸命頑張っています!」

「お客様のために、この提案を考えてきました!」

「お客様のために、こんなサービスをさせていただきました!」

「お客様のために、…」

何らおかしな表現ではありません。

もちろん、そこに悪気なんてあるわけがありません。

しかし、これらの言葉「お客様のために…」は、お客様から高い満足を得るためには不十分な考え方だと思うのです。

では、どんな表現であれば十分であると言えるのでしょうか?

それは、「お客様の立場で…」ということです。

「お客様のために…」「お客様の立場で…」とは、何がどう違うのか?

そんなに変わらない言葉ではないのか?

そう思われる方もいらっしゃると思います。

私も以前はそうでした。

「お客様のために…」は、考えている視点は自分自身であり、お客様とはこういうものだと決めつけているような意味を感じます。

あくまで主語は、「自分」なのです。

一方、「お客様の立場で…」は、考えている視点や主語はお客様であり、自分がお客様だったらどんなことが嬉しいのかを考えることになります。

そこには、当事者意識としてのリアリティがあります。

15年程前、私が営業職として活動していた時、上記のようなことをある会社の人事部長さんから言われました。

「自社の商品の販売代理店になってはいけない。

お客様企業の購買代理店になって、初めて優秀な営業と言えるのだよ。」

それを言われた当時は、その意味がよくわからないまま営業していました。

実際に、その意味を理解できたのは数年後でした(苦笑)。

しかし、その意味がわかってくるとお客様に対するアプローチのレベルが格段に上がったように感じられました。

それは、“レベルが上がった”というよりも、“視野や概念が変わった”という感じに近いのかもしれません。

その数年後、セブン&アイ・ホールディングスの会長である鈴木敏文氏の書籍「本当のようなウソを見抜く(プレジデント社)の中で、同じような内容を発見し、激しく共感してしまいました。

(ちなみにこの書籍。いろいろ感じるものが多いです。お勧めです。)

「お客様の立場に立って考えること」

高いCSを実現するための基本スタンスなのかもしれません。

たまに、ふと思い出してしまうことがあります。

皆さんも、今この場で、思い出してみてください。

「これまでのビジネス人生を振り返り、自分が成長したなって思えた時は、どんな場面でしたか?」

「辛い仕事を諦めずに最後まで頑張って乗り切った時」

「部下や後輩をマネジメントする立場になって、非常に苦労した時」

「新しい領域の仕事を任され、苦労しながら成果を出した時」

「組織全員で一体となって活動し、無理だと思った目標を達成できた時」

「普段は厳しい上司や先輩から、仕事ぶりが認められほめられた時」

まだまだもっとあるでしょう。

ここで以下の観点で振り返ってみましょう。

「何故、その時をそうだと思ったのか?」

「具体的などんな場面で、何を身につけたと思うか?」

「その時は、どんな気持ちだったのか?」

「一番キーとなった行動や状態は、どんなことだと思うのか?」

「その時に、他者から影響を受けなかったのか?それはどんな内容で、どんなタイミングだったのか?」

上記は一例ですが、自ら振り返りながらその時の様子を分解・分析してみましょう。

この分析によって、いろいろなことが見えてきます。

人材開発の施策立案の際に考慮すべきことや、部下マネジメントにおける効果的な部下育成などのヒントが思い浮かんでくるのです。

自分の成長の原点に立ち戻って、改めて冷静に分析してみることで、忘れていた大事な何かを思い出すことでしょう。

お勧めします。

ここ数年で、盛り上がっている「サーベイ」の1つに「従業員満足度調査(ES調査)」があります。

感覚的には、一番多く実施されているサーベイではないでしょうか?

そして、数多くのコンサルティング会社や教育会社が、独自の枠組み(調査指標)によってES調査を提供しています。

今回のコラムは、その調査指標などについてコメントするものではありません。

このES調査。

一体何なのか、その定義を改めて考えて欲しいのです。

「ESの現状を調査するために実施するサーベイ」

多くの方々は、このように回答されるのではないでしょうか?

しかし、本来は、こう回答すべき調査なのかもしれません。(少なくとも、弊社はこう考えています。)

「ESを高めるために実施するサーベイ」

う〜ん、微妙な違いですが、この違いによって、サーベイの中身(調査内容)や実施のプロセスも変わってくるのだと思っています。

ES調査といっておきながら、人事部から一方的にアンケート回答が依頼される。

そして、結果についてのフィードバックも行われない。

行われたとしても、曖昧な結果報告であったり、遅かったりする。

そして何より、アンケートに回答したことに対して、何ら改善される気配なし…。

これでは、ESは下がりますよね。

何のためのES調査なのかわかりません。

調査内容のしっかりとした設計もとっても大事なことですが、ES調査を実施するプロセス自体にも配慮すべきだと思います。

その際、大事にすべきことは、「従業員の立場に立って、従業員の心理を考えること」

しかしながら、このES調査。

一時の流行ではなく、是非とも継続的に実施し、本気でES向上のために活用して欲しいです。

といっても、うまく活用できなくて、1回きりの実施になってしまう会社も多いのだろうな…。

そんな悲しいことを感じてしまう私なのです。

このES調査は、また別の機会にでも語りたいと思います。

とある会社(従業員千数百名)で「360度評価の実施とそれを活用した研修」のお手伝いをした時の話です。

の会社は、これまで数年間に渡って毎年1回定期的に、人事評価の直前に360度評価を実施されていました。

しかし、評価結果の本人へのフィードバックは人事部からの一方的な書類送付だけに留まっていたために、現場の意識は徐々にマンネリ化し、2年前から中断されていました。

それだけに、今回の360度評価実施に対しては懐疑的であり、人事部も現場の中にも抵抗感を持っていた人が多かったようです。

研修は管理職に対して実施し、360度評価のフィードバックを中心とした2日間研修。

ちなみに360度評価の項目は、その会社の管理職に重要な能力を中心に設計しました。

それに加えて、幾つかの意図を持った項目も含めました

(※諸事情により、“その意図”については省略させていただきます)

また、一部の対象者には、個別カウンセリングも実施しました。

で、研修後の結果は…。

「これまで受講した研修の中で、一番ためになった。」

「目から鱗の研修であった。今までの360度評価は一体何だったんだ。」

「リーダークラスにも実施したらいいんじゃないか?」

といった感想が、次から次へと寄せられました。

また、カウンセリング対象者からは、仕事上の深い悩みや自分のこれまでの生き様といった内容までも堰を切ったようにお話される方もおり、中にはうっすらと涙を浮かべている方もいらっしゃいました。

ここでお伝えしたいのは、「研修が成功したこと」ではありません。

「何故、これまでの360度評価は形骸化してしまったのか?」ということです。

いろいろな状況を含め、この研修の関係者が出した結論は一致しました。

「やはり、受講者本人にとって役立つ&適切なフィードバックだな…」

せっかく実施されている360度評価。

皆さんの会社では、現場の対象者の方々にとって嬉しいものになっていますか?

私にとっても、気づきが多かった研修でした。

このタイトルは、結構深いです。

もしかしたら、人材開発や育成に関わる方々全てが、少なくとも一度や二度は、このテーマに関して悩まれたことがあるのではないでしょうか?

このように書いている私も、お客様企業における研修や現場改革の際に、非常に悩むテーマです。

企業の人事部のみならず、学校の先生、塾や家庭教師の先生、そして我が子に対して教育を行う親においては、こんな悩みを必ずお持ちだと思います。

「いつまでたってもやる気が起きない従業員」

「人事部が頑張って企画・準備した研修に対して後ろ向きな参加者」

「現場改革活動なのに、自分は関係ないと言わんばかりの現場従業員」

本当に、困ってしまいますよね…。

上記の従業員に対する考え方や対応策は様々です。

例えば、この経済情勢においては、「やる気の無い人は辞めてもらって結構!」などと厳しい宣告を行うのもありだと思います。

が、出来ればそれは避けたいですね。

では、どうするのが良いのか…。

「絶対、これ!」といった結論めいたものは無いのですが、このテーマに直面すると、いつも意識していることがあります。

それは、「人は感じないと本気で動けない」ということです。

人材開発の教科書などには、「いきなり動かそうと思っても難しい。まずは、何故動かなければならないのかをしっかりと考えさせることが大事だ…。」みたいなことが書かれていますが、私には何だかピンとこないのです。

「考える」⇒「動く」

のではなく、

「感じる」⇒「考える」⇒「動く」

といったように、「考える」前に「感じる」ことがないと、人間って本気で動けないように思うのです。

例えば、人を動かす感情には、「ヤバイ」「悔しい」「羨ましい」「好きだ」「欲しい」などいろいろあると思います。

“考える”ってことの前に、自然と湧き上がってくる熱い感情です。

その実例としてわかりやすいのは、「異性にもてたいという感情」なのかもしれません。

この感情は、本気で人を動かします(笑)。

ここで大事なのは、それをどう仕掛けて、どう感じさせるかということです。

必ずしも、1つの正解があるわけではありません。

対象とする人や集団をやる気にさせるためは、

まずはどんなことを(何を)感じさせるのが良いのか?そして、それを如何に仕掛けて、実際にどのように感じさせるのか?そして、その感情をどうやって目指すべき方向に導き、実際に動かしていくのか?

本気で取り組む人材開発って、奥が深く、難しいものです。

弊社では、研修プログラムを設計する際に、このことをかなり重視しています。

特に、「評価者研修」

いかに評価者に本気で「評価」という大事な仕事に取り組んでもらうようにするのか…。

かなり優れものの研修となっていますよ(笑)!

皆さんは、「360度評価」に対して、どんなイメージをお持ちですか?

これは、私が十数年前に、以前の会社(人材アセスメントツールを提供している会社)で営業をしていた時の話です。

その会社が当時扱っていた商品は、大きく2つありました。

1つは 「適性検査」 であり、もう1つは 「360度評価」 です。

「適性検査」 といってもいろいろありますが、SPIに代表されるように、本人が特定の質問に対して回答することで本人が本来的に持っている基礎能力や性格特性を測定するツールのことです。

当時(十数年前)、複数の営業担当者の雑談の中で、次のようなことが話題になりました。

『適性検査』『360度評価』 は、どっちが営業しやすいか?」

皆さんは、どちらの意見が多く出たと思いますか?

圧倒的に、 「適性検査」 の方が営業しやすいという担当者の方が多かったのです。

その理由は、 「360度評価は厳しいから。」 というものでした。

もう少し具体的に言えば、「360度評価は、他者から評価されるので厳しい仕組みであり、営業窓口である人事部の方も抵抗感を持たれる方が多いので何となく提案しにくい…」といった理由です。

その一方で、「適性検査は、自分一人が回答用紙に向かって、所定時間内に回答するだけで結果が出るので、営業上、提案もしやすい…」という意見が大半でした。

「360度評価」の方が、「適性検査」よりも“厳しい”…本当にそうでしょうか?

「適性検査によって、『自分の特徴(本来的な能力と性格)』がわかったとしても、それを変えることはできない。

しかし360度評価の結果によってわかった『自分の特徴(職場での行動)』は、自分の努力で変えることができる。

その意味では、360度評価の方が、本人にとって優しいツールと言えるのではないのか。

適性検査で測定している内容は、幼少期における家庭環境などの外的要因や遺伝などによって形成されてしまった本来的な特徴であり、必ずしも本人に原因があるとは言えないものです。

そして何よりも、「今からそれを変えろ!」と言われても無理なことです。

しかし、360度評価で測定している内容は、自分が職場でとっている行動特徴であるため、本人にそのことを気づかせてあげれば、いくらでも行動改善や能力向上を行うことは可能です。

今から変えたくても変えられない “本来的な特徴を教えてくれる「適性検査」”

変えようと思えば変えることができる “今の職場行動を教えてくれる「360度評価」”

どちらが本人にとって厳しく、どちらが優しいツールと言えるのでしょうか…?

360度評価は、一見すると 厳しいと感じさせるツールかもしれませんが、本人のことを考えると「優しいツール」だと思うのです。

何だか怖い顔で厳しそうだけど、実は優しい心を持ち、心底子供のことを大事に考えている頑固親父みたいなツールだな…なんて思ったりするのです。

※ちなみに、「適性検査」も上手く活用すれば、物凄い効果を発揮するツールですよ!

特に「SPI」は、お世辞抜きで使えるツールだと思います。

「評価制度」って聞いて、どんなイメージをお持ちですか?

私は、いろいろな企業の人事制度改正を支援する中で、現場の方々に対して上記の問いかけをすることが多いです。

そこで戻ってくる答えは、「給料を決める仕組み」とか、「年に1回の定例行事」とか、「上司が仕事をチェックするもの」とか、中には「嫌なもの…」なんていうのもありました(苦笑)。

そうなんです。

いろいろ感じることはあるものの、あまり良いイメージを持たれていないのですよね、「評価制度」って。

「評価制度」って、本来は3つの役割があるのだと思います。

1つ目は、「活動の目指すべき方向を示す役割」です。

会社が従業員に期待している行動、成果を実現するためにとって欲しい行動や活動の方向を指し示すものです。

2つ目は、「活動の進捗をマネジメントする役割」です。

活動の途中で違う方向に行ってしまいそうな場合、正しい方向に軌道修正するためのものです。

これは、“部下育成”にも通じることです。

3つ目は、「活動結果を測定し、報酬につなげる役割」です。

その測定結果は賃金制度に渡され、そこで給与や賞与を支払うための情報として使用されます。

上記3つは、ビジネスの基本サイクルである「Plan」「Do」「See」に対応しているとも言えます。

そして上記3つは、どれ1つとして欠かせない大事なものなのです。

しかしながら、実態はどうか…

3つ目の「活動結果を測定し、報酬につなげる役割」としか、理解されていません。

1つ目、2つ目の役割を機能させることで、評価制度は最大限の効果を発揮し、それによって人材は活性化し、そして強化されていくのです。

しっかりと評価制度を機能させれば、人材に関するほとんどの問題は解決するのではないかと思ってしまうくらいです。

人事部の皆さん

御社の評価制度において、1つ目、2つ目の役割はしっかりと機能していますか?

改めて考えてみてください。

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