2010年夏。
連日30度を越え、時には体温に迫る気温を記録するなんて、恐ろしい猛暑ですね。
すっかり「夏バテ」しそうですが、これに関連させ「夏ヤセ」のダイエット企画を考えた雑誌(Tarzan 8/26)もあるようです。
そんな雑誌に刺激を受けて、今回のコラムのテーマは「ダイエット」です。
といっても、「ダイエット」なんてしたこと無い方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「ダイエット」と呼ばなくても、「シェイプアップ」や「健康(メタボ)のための減量」のようなことであれば、誰しも何らかの経験があるのではないでしょうか?
では、ここで思い出してください。
あなたは、「ダイエット」に取り組んだ時、一番最初に何を行いましたか?
ほとんどの方が、次のように答えるでしょう。
「体重計に乗って、現在の自分の体重を測ってみる」
つまり、現在の自分の状況をきちんと確認することからスタートされているはずです。
「ダイエット」するのに、自分の今の体重を知らない人なんていないですよね。
そして、次に行うのは、「目標の体重を決めること」でしょう。
例えば、
「私の体重は、今73kgだ。3ヶ月後に60kg台にするぞ!」
「今よりも、1ヶ月以内に1kg痩せるぞ!」
こんな感じです。
「何となく減らしたいな…」という人は皆無でしょう。
ほとんどの人が現在の体重と比較し、目指すべき体重(または減量したいkg)を具体的に設定されているはずです。
目指すべき目標をきちんと設定しないとやる気も出ませんし、途中で何となくうやむやになってしまいそうですね。
そのような目標設定した上でそれを達成するための具体的な施策に取り組まれていらっしゃるのではないでしょうか?
例えば、「食事の量を減らす」、「甘いものは控える」、「スポーツクラブに通う」、「毎朝、近所をランニングする」などです。
そして、時々、体重計に乗って自分の体重の変化を確認し、そのことで、ダイエットに対するやる気を高めたり、減量のための施策を見直したり、いろんなことを考えられるのではないでしょうか。
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これをビジネスの世界に当てはめて考えてみましょう。
「ダイエット」、つまり“理想の状態に近づける”、例えば、“自分の能力を向上させ、ビジネスパーソンとして鍛える”といったことに置き換えてみます。
では、能力向上を行おうと決意された時、どうされますか?
何かの書籍を読んだり、勉強会やセミナーに参加したり、業務遂行上そのことを強く意識したりして、すぐにでも具体的な何かに取り組もうとされる方が多いのではないでしょうか?
しかし、ここで冷静に考えてみると、“あること”に気がつきます。
「現在の自分の能力がどうであるのか?」に全く関心を払っていない…。
つまり、ダイエットの時には必ず行うであろう「現在の自分の状態確認」を行っていないことに気がつきます。
更に言えば、目指すべき目標の状態も具体的にしないまま進めていることが多いのではないでしょうか?
例えば、Aさんという管理職が、マネジメントスキルを向上させたいと考えました。
Aさんは、その時たまたま読んだ雑誌から、「これからのリーダーに大事なことは、組織ビジョンを明確に示すこと」という記事を見つけました。
啓発されたAさんは、「組織ビジョンの設定」に関する勉強に早速取り組みました。
しかし、Aさんの現在の現場でのマネジメント状況における一番の問題は、「部下とのコミュニケーション」。
特に「部下の話に耳を傾けることができていない」ということだったとします。
しかし、Aさん本人はそのことに全く気がついていません。
Aさんが、現状の問題点を自己認識していれば、目指すべき目標として、「1日最低1回は、全ての部下から話を聞く」「部下が話をしている時は、途中で口を挟むことなく、最後まで聞くようにする」といった内容を設定したのかもしれません。
しかし、このままでは、Aさんはいくら頑張って「組織ビジョンの設定」について学んでも、現場でのマネジメントの状態は向上しないでしょう。
彼は、現状の問題を抱えたまま、悩ましい日々を過ごしていくことになるでしょう。
本来、能力向上を考えるのであれば、「現在の自分の状態を把握すること」、そして、「どの能力をいつまでにどの様な状態に向上させるのか」を考えるべきなのです。
その上で、具体的に何に取り組んでいくのか、どの様に取り組んでいくのかを決めるべきでしょう。
自分の現状(強み・弱み)を理解していないまま、何かに取り組んだとしても、必ずしもそのことが効果的に働くとは言えないのです。
更に言えば、勘違いな取組みで終わってしまうことも出てきてしまうでしょう。
当たり前の考え方なのですが、多くの方が、このことに気づいていらっしゃらない。
そんなことを感じます。
では、自分の現在の能力、特に現在の職場で発揮している能力状態をどうやって正しく把握すればよいのでしょうか?
そのための手法として、「360度フィードバック(360度評価)」が最適であると言えるでしょう。
自分の仕事ぶりを良く知る人達からの、能力の発揮状況に関するアンケート調査です。
この調査によって、「現在の自分の強み」、「現在の自分の弱み」、「周囲から期待されていること」などを明らかにすることができます。
早急に具体的な教育施策を考えることも重要ですが、その前に行うべき「現状認識」の大切さについても考えてみるべきではないでしょうか?
御社の人材教育投資を、効果的で実りのあるものにされたいのであれば…。